澱粉はグルコースがα-1,4グルコシド結合によって直鎖状に結合したアミロースとα-1,4グルコシド結合とα-1,6グルコシド結合の両者の直鎖を枝に持つアミロペクチンとからなる高分子多糖類で、我々の主食の一要素で重要なエネルギー源です。アミラーゼ (amylase) は、澱粉などのグリコシド結合を加水分解する酵素の総称で、作用する部位の違いによって、α-アミラーゼ (α-amylase)、β-アミラーゼ (β-amylase)、およびグルコアミラーゼ (glucoamylase) に大きく分けられます。

● α-アミラーゼ
 澱粉やグリコーゲンなどのα-1,4グリコシド結合をランダムに切断するエンド型の酵素であり、別名液化酵素とも呼ばれています。α-アミラーゼは澱粉などを加水分解してオリゴ糖やデキストリンを生成するため、主な用途として水飴やブドウ糖製造時の前段における澱粉液化、酵素分解デキストリンの製造、ハイマルトースシロップの製造およびパンの製造など広範囲で利用されています。
 細菌起源のα-アミラーゼは上田化学工業研究所 (現 エイチビィアイ) が、昭和14年に我が国で初めて工業化しました。

● β-アミラーゼ
 澱粉の非還元性末端からマルトース単位でα-1,4グリコシド結合を逐次分解するエキソ型の酵素であり、生成されるマルトースの旋光性はβ型です。β-アミラーゼは、植物、中でも小麦、大麦、大豆などの穀類とサツマイモに豊富に含有されており、いずれもその活性発現にはSH基が関与しています。ハイマルトシンは上田化学工業 (現 エイチビィアイ) が開発した"小麦β-アミラーゼ剤の製造方法"(特許第1619642号) により、小麦から抽出し、高度に精製したβ-アミラーゼ製剤です。
 β-アミラーゼは、アミロースをマルトースにほぼ100%分解しますが、アミロペクチンに作用したときには、α-1,6結合の直前でグルコース残基1〜3個を残して反応が止まり、巨大なデキストリン分子 (β-リミットデキストリン) が残存します。通常の澱粉は、75〜80%のアミロペクチンと20〜25%のアミロースにより構成されていますので、β-アミラーゼを単独で澱粉に作用させますと、マルトースの収率は40%前後にとどまります。しかし、α-アミラーゼで澱粉を液化した後にβ-アミラーゼを作用させますと、マルトース含量が55%程度のシロップが得られます。また、枝切り酵素 (プルラナーゼ、pullulanase) を併用しますと、マルトース含量が72%程度のシロップが得られます。

● グルコアミラーゼ
 澱粉の非還元性末端からグルコース単位でα-1,4グリコシド結合を逐次分解するエキソ型の酵素で、アミロペクチンに含まれるα-1,6結合も分解します。グルコアミラーゼは、澱粉から直接グルコースを生成するため、主な用途としてブドウ糖の製造、アルコール発酵など澱粉工業、発酵工業などにおいて利用されています。